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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2023. 7  RIETI  LETTER
今度こそ日本復活なるか?!顔画像と経歴



東京大学公共政策大学院教授  鈴木  寛

 失われた30年の元凶は何か?私は、 起業や新分野の開拓、新規産業の立上げ などに力を発揮できる人材の育成に失敗 したからだと思っている。失敗の原因は、 大学入試にあった。2020年までの大 学入試は、大学入試センター試験が中心 であった。東大、京大などの例外を除き、 国立大学のほとんどは大学入試センター 試験の結果を中心に合否を決めてきた。

 大学入試センター試験は、完全にマー クシート型であり、論述が一切ない。と なると正解が明確に一つに決まる問題し か出せなくなる。さらに、多肢選択型が ほとんどなので、与えられた選択肢の重 箱の隅をつつき、小さな間違いを発見し、 消去法で、答えを導くという解法に長け た生徒が高得点をとる。

 大学入試センター試験の原型は共通一次 試験で、1979年に始まった。当時は、 ジャパン・アズ・ナンバーワンなどで、日 本の製造業がもてはやされていた。まさに、 国公立大学をめざす約30万人を対象とし た共通一次試験は、世界一の製造業の競争 力を維持するために必要とされる学力を 測っていた。つまりは、マニュアルを覚え、 それを高速かつ正確に再現する能力、ある いは、高速かつ正確に再現しているかを チェックする能力が重要であった。

 しかし、その後、情報社会が到来し、 マニュアルを正確に高速に再現する仕事 は、デジタル技術が人間に置き換わった。 情報社会での人間の仕事は、ゼロから一 を創造することに変わった。

RIETI LETTER 表紙画像  1993年クリントン・ゴア政権の誕 生によって、本格的な情報社会に突入す る。本来ならば、このタイミングで大学 入試を変えるべきであった。しかし、 1990年に大学入試センター試験に変 えたばかりで、私立大学も新たに参加し、 やっと定着したばかりの時期であったた め、大学入試センター試験の見直しを発 議できなかった。しかも、この間、理工 系の学部の入学定員を抜本的に増やす必 要があったにも関わらず、それもできな かった。そして、日本は産業構造転換に 失敗したのである。

 2020年から、ようやく大学入試が 抜本的に変わり始めた。国立大学協会は、 入学定員の三割を総合型選抜に変更し、 高校時代に受験勉強一辺倒ではなく、 様々な活動を通じて、創造性や探究力を 磨いた学生を選抜するようになった。ま た、2022年から高校では「総合的な 探究」「理数探求」という科目が新設され た。全国の各地で探究学習を行っている 高校を三菱みらい育成財団も「心のエン ジンを駆動する」と銘打って全面的に応 援を始めた。こうした官民の動きによっ て、探究や実際のプロジェクトに基づく 学習(PBL)に打ち込む高校生が一挙 に増加している。2023年春に行われ た「高校生マイプロジェクトアワード」 で、7万人の高校生が自分で自分のプロ ジェクト立ち上げていることが明らかに なった。まさに、受験エリートではない、 創造性にあふれた若者が急速に増え始め ている。日本浮上のカギを握るこうした 若者たちに大いに期待したい。我々、大 人たちも彼らを全面的に支援したい。


次号は、一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会理事長の山中伸一氏にお願いいたします。

リレーエッセイ 「今度こそ日本復活なるか?!」(リーチレター 2023年7月号)
東京大学公共政策大学院教授  鈴木  寛

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