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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2023. 2  RIETI  LETTER
多くの総合診療医を育成したい顔画像と経歴



藤田医科大学  連携地域医療学准教授  大杉  泰弘

 医療業界では、ある専門医が注目され つつあります。それはこのコロナ渦であ らためて注目された、かかりつけ医機能 を有する「総合診療医」です。

 ひとつの臓器にとどまらず、それぞれ が影響する関係や原因を推論できる高い 診断力を持ち、日常生活における心理的 な悩みや家族やその地域も詳しく知って いる、本人のみならず家族まるごと診る ことのできる医師、令和の町医者のイ メージです。欧米に遅れること40年、 2018年ついに総合診療専門医制度が 始まりました。

 私は2006年から福岡県の飯塚病院 で、まだ専門医制度はありませんでした が総合診療医の第一歩を歩み始めまし た。訪問診療を行い患者さん宅で医療を 行う、町にでて地域のステークホルダー とともに地域の健康を守るための活動を したり。

 病院の中にいるだけでは全くわかって いなかったことが少しずつ分かるように なっていった気がします。介護の大変さ、 末期の患者さんの心理、町内会の方々が どんなことをされているか、実際家に 伺った際のその家族の息遣いなど。また、 多くの方を自宅で看取りました。

 この経験は生涯をかけて行っていく医 療であると心に定めることができるよう になる期間でした。

 また、同時期より縁があり、アメリカ のUniversity of Pittsburgh Medical Center の家庭医(総合診療医)の指導医 から指導を受ける機会を得て、総合診療 医の価値や教育の意義を革新するように なりました。志が生まれました。教育の 力で総合診療医が育ち増え、日本中に普 遍的にインフラのようにいる世の中に変 えたいと思うようになりました。

RIETI LETTER 表紙画像  2015年地元愛知の藤田医科大学に 戻ってきました。

 その中で私が深く関わることになる豊 田地域医療センターは150床の中小病 院でかつ赤字体質でそのままではおよそ 若手医師に魅力的に思える病院ではあり ませんでした。

 ただ、総合診療医にとっては大変魅力 的な場である可能性があり、総合診療の 教育機関へ変えて訴求すれば若手医師に 魅力的に思ってもらえる可能性があるの では?と仮説をたて行動をはじめまし た。

 その結果は2018年から総合診療専 門医制度がはじまったという運にも恵ま れ、その仮説は正しく若手医師が集まる 活気のある病院になっていくことができ ました。

 当初3名でスタートしたものが、豊田 地域医療センター単体で約35名、藤田 医科大学総合診療プログラム全体で約 80名の医師が所属するグループとなる ことができました。現在は多くの総合診 療医が育成される環境になっています。

 同時に豊田地域医療センターも改革さ れ、2020年以降のパンデミックも発 熱外来・ドライブスルーPCR・30床 の入院・ワクチンなどとしっかりと役割 を担うことができるようになっていきま した。

 現在は総合診療医が集うコミュニティ ホスピタルという新しい価値の病院へと 変わってきています。

 今後も教育により多くの総合診療医を 育成し、日本の未来の健康に寄与してい きたいと思っております。


次号は、「似顔絵セラピー」「医療とアートの学校」代表 アーティストの村岡ケンイチ氏にお願いいたします。

リレーエッセイ 「多くの総合診療医を育成したい」(リーチレター 2023年2月号)
藤田医科大学  連携地域医療学准教授  大杉  泰弘

 info@chosakai.or.jp
 http://www.chosakai.or.jp/

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