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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2023. 1  RIETI  LETTER
兼業起業のエンジニア達が挑戦する社会課題解決顔画像と経歴



株式会社エンサポート代表取締役CEO  山口  勝也

 リーマン・ショックの翌年となる 2009年1月、当時の勤務先が経営破 綻となり、民事再生法の適用を申請しま した。負債総額は、東海エリアの建築・ 不動産業としては過去最大の約430億 円で、これに伴い、上場も廃止となりま した。

 当時、私は住宅部門のエリアマネジャー という立場で、主に分譲住宅の販売と管 理を担う職責を務めておりました。

 対外的な経営破綻の理由は、金融機関 が返済を求める「貸しはがし」による資 金繰りの悪化と言われておりましたが、 今思えば本当の理由は私を含めた組織全 体が、お客様のマイホームよりも会社の 業績を優先する姿勢にあり、そこに根深 い問題があったと振り返ります。

 再生計画案の可否が確定するまでの約 半年間、私は経営陣から指示を受け、代 理人となる弁護士事務所と相談しなが ら、マイホームの手続きを中断させてし まっている100世帯を超えるお客様の もとへ訪問し、お詫びや状況説明を何度 も重ねました。

・ お金を頂いているにも関わらず施工が 進められない
・ 建物は完成していても鍵をお渡しでき ない
・ お返しすべきお金の返金もできない 今後の見通しが立たず、手続きを進展 させることの出来ない私の説明に対し て、お客様から激しい罵倒を頂く中で、 次の学びを得ました。
・ 約束を破れば、信頼関係は一瞬で破綻 する
・ 苦しい状況下ほど、真摯に向き合うこ とで応援が受けられる

 そして、遂に再生計画が承認される目 途が立ったという連絡を受けました。 しかし、その計画には「人員削減」が 条件として含まれていました。

RIETI LETTER 表紙画像  「解雇する社員のリストを提出して下 さい」との指示を受けた私は、そこで自 分の名前を記入することを選択し、会社 からも業界からも去る決断をしました。

 一旦は、職も立場も、使命感も失うこ とになりましたが、自分の人生観を見直 す機会になりました。

 そんな折に、故郷である三重県の住宅 会社の社長から「もう一度、やってみま せんか?」と声をかけてもらい、注文住 宅業界で一から出直す道を選びました。

 現場経験を積み直し、数年後には、顧 客起点での商品・サービスづくりを、更 には、組織の成長期における新規出展や 人材育成を中心とした仕組みづくりな ど、多岐にわたる実践経営を経験し、気 がつけば、住宅事業の執行役員や関連会 社の取締役を担うことになりました。

 会社も2017年にTOKYO PRO Market へのIPOを果たすことになります。

 上場という目標に対して、一区切りが ついた私は、本当に自分がやるべきこと を経営者として実現したいと考え、起業 を決断しました。

 「経営や人生で重大な決断をする際に 最も頼りにされる」

 株式会社エンサポートは「情熱×テク ノロジーで人生の好循環に貢献する」と いう想いのもと創業しました。

 人とのWご縁W、お金のW円Wに感謝 し、一人ひとりが安心して、住宅をはじ めとした不動産の売買・運用ができる サービス提供を通じ、日本経済の発展に 貢献できますと幸いです。


次号は、藤田医科大学連携地域医療学准教授の大杉泰弘氏にお願いいたします。

リレーエッセイ 「上場廃止・民事再生を乗り越え、IPOから得たこと」(リーチレター 2023年1月号)
株式会社エンサポート代表取締役CEO  山口  勝也

 info@chosakai.or.jp
 http://www.chosakai.or.jp/

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