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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2022. 11.  RIETI  LETTER
100年企業のサステナビリティ経営顔画像と経歴



  三星グループ代表  岩田 真吾

◯世界第二位の汚染産業を変える

 繊維ファッション産業はサステナビリ ティの問題児と言われ、国連でも世界第 2位の汚染産業とみなされました。また、 マイクロプラスチックによる海洋汚染の 35%は化学繊維由来という調査結果も あります。

 100年以上にわたって「ウールを中 心とした天然素材の生地作り」を生業と し、尾州産地(愛知岐阜にまたがる尾張 地方)に根ざして事業を営んできた三星 毛糸としても、サステナビリティには正 面から向き合い、事業の核にしていこう と考えています。

 私は2009年6月に家業に戻り、翌 2010年4月に代表取締役社長になり ました。(父親は健在だったのですが、「早 く失敗経験を積め」という教えでスピー ド承継となりました。このエピソードは また別の機会に。)そこから、過剰生産大 量消費を前提とするのではなく、顔の見 えるものづくりをしていこうと、オース トラリアや中国の牧場を訪ねて羊飼いと 交流したり、商社任せだった海外輸出を 自分たちで開拓したり、自社ブランドを 立ち上げて使い手と直接繋がるようにし たりと、新しい取り組みに挑戦してきま した。

 途中、染色工場の撤退など厳しい経営 判断も経て、なんとか先が見えてきた 2020年春…コロナが世界を襲いまし た。飲食や観光ほどの急激な落ち込みは なかったものの、繊維産業も不可逆的な 打撃を受け、尾州産地は暗いムードに覆 われていました。

RIETI LETTER 表紙画像  それまでは「自社が先進事例になれば 良い」と考え、産地との馴れ合いを避け てきた自分でしたが、スイッチがパチっ と替わる音が聞こえました。「お客さまを 囲い込むのではなく、シェアしよう」「で きることを持ち寄って、全体の発信力や 付加価値を増やそう」という想いに多く の仲間が集まりました。

◯産業観光(クラフトツーリズム)で緩 くつながる

 何世代にも跨って独自文化を作ってき た企業同士が、いきなり事業統合すると いうのは現実的ではありません。まずは 一つのイベントを共に創り上げ、信頼関 係を醸成するところから…ということ で、工場見学をメインとする産業観光を 開催することにしました。

 その名も「ひつじサミット尾州」です。 他の候補名もありましたが、あえてウー ルのもととなる「ひつじ」を掲げ、ふん わり柔らかく、そして温かみがある尾州 産地のものづくり文化を発信することに しました。

 また、持続可能性や地方創生などテー マを広く設定したことで、繊維事業者だ けでなく、自動車やエネルギーなど様々 な地元企業が仲間になってくれました。 結果的に、初年度にも関わらず延べ1.2万人の来場者があり、3千人を超える 方がオンライン配信を見てくれました。 自社ブランドを立ち上げた会社も多く、 1千万円以上の売上も上げることができ ました。

 多くのゲストと参加事業者からの声を受 け、今年も10/29(土)〜10/30(日) に開催する予定です。ぜひ皆さんも視察(遊 び)に来てくれたら嬉しいです。


次号は、どんぐりピット合同会社CEO 鶴田彩乃氏にお願いいたします。

リレーエッセイ 「100年企業のサステナビリティ経営」(リーチレター 2022年11月号)
三星グループ代表  岩田 真吾

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