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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2022. 9.  RIETI  LETTER
常に現場を科学する、研究開発型の農業カンパニーを目指す!顔画像と経歴



  株式会社浅井農園  代表取締役  浅井 雄一郎

 明治40年(1907年)創業のあさ い農園は百余年にわたりサツキツツジを 主とする花木生産を生業としてきまし た。花木需要の低迷に苦しんでいた 2008年、東京から戻った五代目の私 は家業を立て直すため、第二創業として ミニトマトの生産を開始しました。植物 を育てるという意味では同じ農業です が、それまで観賞用の「食べない農業」 をしてきた家業にとって、「食べる農業」 への転換は容易ではなく、全く異なる業 界への新たな挑戦でした。

 第二創業から14年が経過し、多くの 仲間が私たちの新たな農業プロジェク トに参画してくれて、社員は単体で 120名、グループ合計で500名を超 え、家族経営の農業から組織的な企業経 営の農業へと大きな変革を遂げました。 現在のあさい農園が存在するのは、農場 で一生懸命一緒に汗を流してくれた仲 間たちの努力によるものですが、その他 の主な要因としては、「テクノロジー」 と「地域資源」の活用であったと考えて います。

 弊社の農場には様々なセンサーが設置 されており、栽培環境情報や植物体情報 などを自動的に計測してデータとして活 用できるようになっています。暗黙知の 多かった農業現場を見える化した事によ りPDCAサイクルが回せるようになり ました。さらに近年では、自動車部品大 手のデンソー鰍ニの共同出資により潟A グリッドを設立し、トマト収穫ロボット や自動搬送ロボットの導入などロボティ クス技術の活用により自動化の実証試験 などを実施しています。この農場では、 「ヒトとロボットが協働する生産システ ム」を開発するというコンセプトで、次 世代型の農業モデルの開発に取り組んで います。

RIETI LETTER 表紙画像  2013年に辻製油鰍ニ三井物産鰍ニ の共同出資により設立したうれし野アグ リ鰍ナは、地域の間伐材由来のバイオマ スエネルギーと植物油脂を製造する食品 工場排熱を活用して農業ハウスの暖房に 利用しており、カーボンニュートラルの 農業生産システムを確立しています。ま た2018年より耕作放棄地を活用した 果樹園地の開発に着手し、ニュージーラ ンドのゼスプリとの提携により、三重県 玉城町においてキウイフルーツの生産を 開始しました。この園地では、土壌改良 を目的として、松阪牛の堆肥が三千トン、 浦村かきの牡蠣殻石灰が三百トン使用さ れており、様々な地域資源の循環が実現 されています。

 社会が常に変化していく中で、私たち 自身も変化し続けなければならないと 常々考えています。あさい農園は創業か ら100年経ってからの第二創業でした が、社員全員の力を合わせて、次の第三 創業、第四創業とその間隔を短くしてい けるよう常に挑戦を続けていく会社であ りたいと思います。農業者であり研究者・ 科学者でもある「アグロノミスト(農学 士)」たちを育てていくことで、常に現場 を科学し、ゼロイチで新たな価値創造に 取り組む研究開発型の農業カンパニーを 目指していきます!


次号は、三栄商事株式会社代表取締役の後藤正幸氏にお願いいたします。

リレーエッセイ 「常に現場を科学する、研究開発型の農業カンパニーを目指す!」(リーチレター 2022年9月号)
株式会社浅井農園  代表取締役  浅井 雄一郎

 info@chosakai.or.jp
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