堀田カーペットは祖父が1962年に
創業し、私が三代目、ウール素材を使っ
たウィルトンカーペットを製造する会社
です。本社は大阪府和泉市にあり、30
名ほどで製造している、中小企業です。
一般住宅におけるカーペットの市場
は、1970年代をピークに1/100
にまで減少し(現在の新築床面積の占め
るカーペットの割合は0・2%)、ウィル
トン織機を保有する会社は、日本に数社、
織機メーカーは日本にすでになくなり、
世界でも数社を残すのみとなりました。
カーペットそのものの市場の減少と、
ウィルトンカーペットにかわり量産型の
機械を使用してつくられるタフテッド
カーペットが主流となり、いわゆる斜陽
産業ど真ん中、多くの経営書では「撤退」
を進められる産業です。
ですが、私自身、家中ウールカーペッ
トを敷き込んだ暮らしをし、実際にもの
づくりに携わるものとして、カーペット
の暮らし「CARPET LIFE」や、ウィル
トンカーペットは、間違いなく良いもの
であり、他の床材では実現できない暮ら
しがあります。
こういった環境の中、「カーペットを日
本の文化にする!」というビジョンを掲
げ活動をしています。これは、畳のよう
に誰もが日本らしいと思うものになりた
い、ということではなく、住まい方とし
て、「CARPET LIFE」を選択肢の一つと
して未来につないでいくことを意味して
います。
一方で、車はガソリンからEVへ、小売
はリアルからECへ、など技術の発展や
時代の流れとともに移り変わってきた産
業が多くある中で、「カーペットを日本の
文化にする!」、というビジョンの先に、
どのように社会がよくなるのか?本当に
未来に残していく価値があるものなの
か?という疑問をもつようになりました。
私は、この疑問に答えるきっかけをつ
かみました。
それは、私の友人である工芸に携わる
職人(漆や和紙お箸など)の工場を見せ
てもらい、お話を聞かせていただいたと
きのこと。彼らがつくる姿に、ものづく
りの背景に、つくられた美しい製品に、
心から感動しました。それは、彼らが、
未来にどうなりたいのか?そのために何
をするのか?ということを感じたからで
はなく、まさしく彼らが今そこでものを
つくる姿、つくられた製品そのものに心
を動かされました。
斜陽産業の中にいると、どうしても
「今」の価値に目を向けるよりも、未来や
社会に目を向けがちなのだと思います。
私自身もそうでした。「このままではダメ
だ」と。ですが、お客様は今のものづく
りの姿勢に、つくっている製品に、心を
動かされているのではないか?
私は、彼らと接する中で、自社の存在
価値は、「わたしたち自身が誇れる『もの』
『ものづくり』『会社』をつくる」ことな
のだと気づきました。私たち自身の誇り
に向き合う姿勢が、そこから生まれるも
のづくりやものが、社会を一歩良くする
と信じ、カーペットを日本の文化にす
る!ことに邁進したいと思います。
次号は、、藤原印刷株式会社専務取締役の藤原隆充氏にお願いいたします。