「もっと早く会いたかった」と涙ながら
に言われたのが五年前になります。
それは無謀な資本政策により資金調達
ができず、共同創業者と喧嘩し株式が分
散、その後部下の裏切りとまさに心肺停
止状態のスタートアップ経営者でした。
ビジネスもスポーツも同じでメソッド
があるんですね。それを知っているか知っ
ていないかだけで結果が大きく違います。
それにはメンターが重要です。特にシー
ド期のスタートアップには理論だけでは
なく成功経験のあるメンターから、その
経験(失敗体験も重要)を元にしたアド
バイスを受けることが非常に重要です。
頭のような不幸なスタートアップを
増やさないように2016年に一般社団法
人日本スタートアップ支援協会を設立し
ました。ありがたいことに「先輩起業家
が後輩起業家を育てる」「失敗学の継承」
という協会コンセプトに共感して70名
以上の上場企業の経営者たちがメンター
顧問に就任してくれました。当時私は会
社を売却してこれからの人生をどう生き
ていくが結構悩んでいて、この組織が5年
後にまさか会員150社、顧問140名、
スポンサー20社の大きなエコシステムに
なるとは夢にも思っていませんでしたが。
しかしスタートアップ支援4年目で大
きな壁にぶち当たることになります。そ
れは起業家が「外部株主の持ち株比率が
高過ぎて経営のリーダーシップが取れな
い」「バリューが高過ぎてバイアウトも次
のラウンドにも進めない」など成長を阻
害する事案が増えてきたことです。これ
を打破するために2019年に顧問を中
心に30名以上の上場企業経営者や士業、
金融機関からLP出資をしてもらいエン
ジェルファンドを組成しました。これで
協会から初期に出資をすることで健全な
資本政策と株主構成、ビジネスモデルの
ブラッシュアップが円滑にできるように
なりました。過保護にならないように要
請があれば支援する「ハンズイフ」のス
タンスでサポートしています。最近は他
のVCとの協調投資が増えてきたので「呼
び水ファンド」として投資先からも喜ば
れ、女性起業家や大学発ベンチャーへの
投資も積極的に行なっています。一号ファ
ンドは組入れがまもなく終了しますので
次の二号ファンドも計画中です。
今年60歳になる私は今、この仕事に
非常にやりがいを感じています。周りか
らも「まさに天職」と言われます。六年
目の今年はオープンイノベーションの文
脈で大企業、大学、地方自治体からの仕
事の依頼も増え、時代はまさにスタート
アップの時代となりましたね。日本のベ
ンチャー投資金額も5年前と比べると三
倍以上、スタートアップの起業家数も倍
以上で国や行政、民間の支援体制やエコ
システムも急拡大中です。しかし上場や
M&Aなど成功経験のあるメンターがま
だまだ少ないと感じます。ペイフォワー
ドの精神でメンターやエンジェル投資家
としてスタートアップエコシステムに参
加される「先輩起業家」が増えることを
祈念しながらこのエッセイを締めたいと
思います。
ありがとうございました。
次号は、、Chatwork 株式会社代表取締役CEOのの山本正喜氏にお願いいたします。