最近、お口の健康が全身健康を保ち、人生の質 『Quality of Life』を保つうえで、とても重要だということが広く認識されてきました。
そして、日本人の『歯の健康力』は、年々高まってきています。現在、12歳児の平均むし歯本数は、0.9本まで減少しており、また、80歳の3人に1人以上の方が、自分の歯を20本以上持っています。日本人の人生の質は、格段に高くなっていると思います。80歳で20本以上自分の歯を持つ『8020』は、生涯現役のひとつの指標になるでしょう。
長寿と歯の本数は、とても関係が深いようです。
100歳以上の方の楽しみを調査したデータでは、1位が「良く食べること」、2位が「家族との語らい」、3位が「良く寝ること」、4位が「友人との談話」でした。つきつめると、人間の楽しみというものは、意外とシンプルなものなんですね。
そして、この4つの楽しみには、お口の健康が大きく貢献しているんです。
先ず、「良く食べる」ですが、「何でも良く食べること」 と、「良く噛んで食べること」の二つが大事です。栄養学の泰斗 川島四郎先生の説では、人間の歯は肉を引き裂く鋭く尖った犬歯、野菜を噛み切る平らな門歯、穀物をすりつぶす臼歯が、1:2:5の割合で構成されており、人間にとって最も適した食性は、「肉が一に、野菜が二、穀物等が五」の割合で、バランスよく食べるのが良いというものです。因みに、肉食の狼の歯は全部犬歯です。動物によって、その命を支える食性と歯の構成には密接な関係があります。
次ぎに、「良く噛んで食べる」ということですが、「一口入れて30回」良く噛んで唾液と良く混ぜて、飲み込むことが大事です。良く噛むことは、脳への血流を促し、認知症の予防にもなります。また、唾液は発ガン性物質を抑制する効果があり、天然の不老長寿の妙薬といわれています。
さて、「良く話す」ということですが、話すこと、コミュニケーションが良く取れるということが、人間を人間らしくしている最大のポイントだと思います。歯が無くなると、発音が明瞭でなくなり、何度も聞き返され、そのうち話すのがおっくうになり、やがて、自分に閉じこもるようになってしまいます。話すことは、人生の質を高め、そして、心の健康にとって、とても大事なことなのです。
以上のように、生涯現役で過ごすにはお口の健康がとても大事です。そのために大事なことは、予防歯科の実践です。即ち、定期的に必ず歯医者さんに行き、予防的措置をしてもらうプロフェッショナルケアと、家庭で正しいオーラルケア習慣を身につけて実践することです。
『良く噛んで良く食べること』、『人の話しを良く聴き良く話すこと』、『情感豊かに良く笑うこと』、即ち、人生を味わうということです。人生を味わい、そして今日生かされていることに 『ありがとう』 との感謝の心を持つことが、生涯現役で健康に過ごすための、秘けつだと思います。