都留文科大学をご存知だろうか?筆者が今年4月に着任した、山梨県東部の都留市に位置する公立大学である。一般に大学は私立と国立、公立に分けられるが、公立の中でも県立ではなく市立である。その最大の特徴は、都留市という小規模の地方都市が設置者ということだ。
全国に公立大学は86ある(一般社団法人公立大学協会)。その約半数は都道府県立で、残りが市立(及び広域連合立)である。市立と言っても、政令指定都市については、大規模な大学が少なくない。例えば、大阪市立大学は8407名、北九州市立大学は6561名、横浜市立大学は4887名といった学生を擁している。
しかし小規模の地方都市が、大規模な大学を設置し、運営するのは容易ではない。その中では、高崎経済大学の4173名が最多であるが、高崎市は人口37.5万人の中核市に該当し、小規模とは言えないだろう。実は、これに次ぐ3344名を擁する地方市立大学(公立大学法人)が、都留文科大学なのである。
都留市の人口は3.2万人で、高崎市の一〇分の一に満たない。公立大学の設置都市でこれに匹敵するのは、北海道の名寄市(2.9万人)、岡山県の新見市(3.2万人)などに限られる。名寄市立大学の学生数が586名、新見公立大学の学生数が259名であることと比較すれば、当大学の学生の多さは際立っている。
しかも、「文大生」3344名の内、山梨県の出身者は10%に過ぎない。90%の学生が、北海道から沖縄県まで、各地から都留へ集まってきている。そのため当大学の入学試験は、全国の17の会場で実施されている。結果的に、文大生の90%以上が都留市内に下宿している。ということは、都留市の人口の約10%が、文大生ということだ。都留文科大学は、都留市にとって最大の「産業」と言えるかもしれない。
当大学は、教員養成所として発足した経緯があり、特に小学校教員の養成に強みがある。学科を増設した現在でも、卒業生の約35%が教員になる。また、筆者が所属する社会学科を中心に、地方公務員になる学生も多く、全国にこれら人材を輩出している。「地方創生」が叫ばれる中、都留文科大学は全国の地方自治体にとって、興味深い事例ではなかろうか。
筆者はこのような大学において、「地方自治論」を担当している。地方における地方のための大学にとって、極めて重要な科目である。都留市と関わりを持つのは初めてであるため、まだまだ地元について勉強不足だが、やはり地域に根差した授業をしていきたい。
例えば都留市では、以前から町おこしの一環からも小水力発電に取り組んできた。また、富士山が世界遺産に登録されてからというもの、多くの外国人観光客が訪れるようになった。このような地域ならではの強みを活かした住民や地元企業による活動、それを支える地方自治体の政策はどうあるべきか、地域に腰を据えて考えていきたい。