交換は、その参加者に大きな利益を生む。しかし、自然と人間との間の交換では、利益を得るのはほとんどの場合人間であって、人間は自然からいただくサービスに対価を払わず、つまりは自然の再生のために費用を出すことを惜しみ、儲けだけを手にする。もし、自然を壊してお金に換える、こうした商売が続いていったら、行く着く先は、もはや壊す自然も残らず、代わりに、お札の山がそびえ立つ世界である。お札の山では食べられない。したがって、人間がこの地球で末永く生きていくとすれば、環境に手入れをし、再生する費用を支払うことのできる商売へと、今の商売の形を替えていかないとならない。
そう思い定めて、お役所(環境省)を辞めて以降ここ四年ほど、大学教授の肩書を活かしつつ、企業の経営者の方々と、環境経営の道を探る機会を様々に作ってきた。
その過程で、環境を今以上に守ることで儲けも得る方法のヒントとなることも段々に分かってきた。
例えば、環境と言えば専門家の領域かと思われがちであるが、どんな製品やサービスにも環境との接点があるので、その接点を改善することで、どんな製品・サービスでもエコ性能を上げることができ、それを売ることができればすべての商売がエコビジネスになり得る、というのは一つの重要な発見であった。ただし、エコ性能だけを売り込むことは必ずしも説得的ではない。成功する方法は、エコ性能が上がると同時に性能が高まる、例えば、健康や安全・防災に役立つ価値も、一緒に売り込んでいくことである。そして、製品やサービスのヴァリューチェーンに、多くのステークホルダーが顔の見える形で参加できるようにすることも、成功例によく見られる仕掛けであった。また、供給者と顧客とが、互いに、目や舌を肥やし本物の識別眼を高め、育て合い、製品・サービスの質を継続的に高めていく仕組みを埋め込むことも有効な手法であった。
このような工夫をすることで、環境を大切にすることを通じて今以上の利益を確保することは可能なのである。
私は、何事も、ただしゃべり、あるいは字にするだけでは満足のいかない性質である。そこで、エコハウスを自宅として一五年以上実践してきた経験を踏まえ、今度は、商売としてのエコハウス、すなわち、エコ賃貸をその大家として始めることとした。さらに、再生エネルギーやリサイクルに熱心な会社の取締役も引き受けることとした。
自分が事業主・経営者になってみると、いろいろな困難も見えてきた。けれども、新しいビジネスチャンスに乏しい日本で、しかし、日本人こそ、歴史的に培ってきた自然共生の想い、もったいないという資源への畏敬、すべてがつながって輪廻する生態系へのまなざしを活かして商売できる、との確信も一層高まった。環境で稼がず、何で稼ごう。