私は3歳から小児ぜんそくを患いました。親が身体を強くさせたいと思い、始めたのがスピードスケート。ぜんそくという病気は今現在も抱えていますが、この病気がなければ今の僕はありません。ここ近年、ぜんそく患者の中には大人になって急にぜんそくが発症し、「もう、普通の生活ができないのではないのか」と絶望のふちに立たされる人がいますが、そんなことはありません。自分の身体に合った薬を併用しながら、軽度の運動を取り入れる事で克服できます。逆にいえば、ぜんそくは人生の武器になります。この病気を抱えた人は、常に心肺に意識がいく、その分、健常者より繊細になれるのです。また私は選手時代より腰痛をはじめとする身体の不具合を抱えていました。私に限らず何かしらのハンディや病気を克服したい、そのようなアスリートは世界に沢山います。自己管理とケガに対する予防とリハビリテーションに対して経験豊富なアスリートという人材を、もっと医療の現場で活かしていきたい、そのような思いと経験も踏まえ、選手引退後は治療院を開設し、治療・リハビリテーションの活動に取り組んでいます。人は幸福を追求する権利を有し、憲法もこれを定めています。私は治療院の運営を通じて豊かに生きる権利と社会保障の問題を両立させるためには、そのような治療・リハビリテーションの更なる技術や制度の発展はもちろん、「予防」という疾患に陥らないように予め対策することが大きな課題と考えています。
日本の65歳以上の人口が総人口の4分の1を超えたと発表されました。これからは、健康寿命をどう延ばしていくかが、課題になっていきます。しかし、社会保障費が増えることはなく、間違いなく削られていくでしょう。医療も大事です。どうすればお医者さんにかからずに健康に過ごしていくかが、求められていきます。国は医学部の増設も考えているようですが、アスリートをもっと活用することを提案したいと思います。アスリートはいろんな引き出しを持っています。ウオーミングアップひとつとっても、高齢者に適している方法を知っています。日本は理学療法士の数が足りていません。教職課程のように、大学で学びながら、理学療法士の資格が取れる学部を増やしてみてはどうでしょう。大学でスポーツをやっていた人間がそのまま競技スポーツを続けるとは限りません。そういう人たちの就職先、あるいは実業団やプロで競技を続けたアスリートのセカンドキャリアとしても、資格があればスムーズにいきます。アスリートと高齢者の関係がうまく循環して、医者にかかる人が減り、健康寿命が延びることにつながるはずです。一人ではなかなか運動は続きません。引き出しの多いアスリートがつくことで、長続きします。アスリートが現役引退後も国益という人的財産へとなるよう切望しています。