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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2013. 5.  RIETI  LETTER
これからの広告界に求められる人材顔画像と経歴



  トレンダーズ(株)「キレナビ」編集長  伊藤 春香

 先日、「広告界に今後求められる人材とは」というテーマで、パネルディスカッションに出る機会があった。広告業界をわずか二年半で辞めた私がそのテーマを論じるのもおこがましいのだが、サービス運営側に移ってみて、いろいろと考えることがあったのでこの機会に記したい。

 コピーライター時代は、魅力的な映像表現やコピーこそが、広告の真髄だと思っていた。けれど転職し、今まで自分が見ていたもの・目指していたものとは違うアプローチが必要になった。広告を買う側になって痛感したのは「広告の効かなさ」だ。テレビCMや大々的な交通広告を出す体力は弊社には無い。一番お世話になるのはインターネットのバナー広告だが、レスポンスの低さに毎回毎回打ちのめされる。それでも広告は必要なわけだけれど、「結果が出る広告」以外は欲しくないと切実に思うようになった。以前は「いかに新しいもの、見たことのないものを作れるか」を意識し、良いコピーや面白い仕掛けの実例を日々追った。けれど今は、日々の売上に直結する、検索ワード、バナーの文言、メルマガの書き方、クリックされやすいデザインなど、細かくて地味なデジタル領域を究めるほうが優先だ。

RIETI LETTER 表紙画像  毎朝私が一番に行うのは、前日の売り上げとサービスのPV(ページビュー)のチェック。何がどれだけ売れたか、容赦なく出る。クレジットカードの〆日やメルマガを配信したかどうか、期間限定セールやメルマガ会員限定のシークレットセールのあるなしで、全然売上が違う。売上が目標数字から乖離したら、すぐに対策を打つのが私のミッション。コピーライター時代はコピーを書くために数日の猶予を貰っていた。けれど今は売上次第で、今日、明日、今週、来週の施策が変わったり増えたりする。そんなスピード感で、現場は動く。

 めまぐるしい毎日の中で、広告のコンテストで表彰されるような取り組みは、すぐに取り入れられるようなことではないので、キャッチアップしなくなった。また、赤字覚悟のセールや、ポイント付与などでユーザーに還元することが時には広告よりも効くことを実感した。そういった販促施策は、果たして広告会社にいたらクライアントに提案できただろうか。広告界の人間が「バナーを出すのは最小限にしてユーザーにポイントをあげましょう」と言えるだろうか。

 これからの広告界の人には、是非、担当商品の現場を体験して欲しいと思う。現場スタッフやユーザーの生の声を、一緒に感じて欲しい。そしてその中で、たとえ広告会社が一時損をしたとしても、長い目で見てサービスが育つ提案をしてくれたら嬉しい。それを実現するためには広告会社とクライアントの蜜月関係が必要で、いちいち競合プレをしていたら、そんな関係は出来っこない。課題はいろいろあると感じている。



次号は、手品師の内田伸哉氏にお願いします。
リレーエッセイ 「これからの広告界に求められる人材」  (リーチレター 2013年5月号)  トレンダーズ(株)「キレナビ」編集長  伊藤 春香

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