ロサンゼルスに拠点を置いてから、すでに10年以上の歳月が流れた。この街から発信されるエンターテインメント・ビジネスは、世界中の人々を魅了する。世界中から夢を追う人間たちが集まる。映画監督、俳優、ミュージシャン、パフォーマー、ダンサー、プロデューサーはもちろんのこと、アニメーター、デザイナーなど、その大きな成功を夢見てこの街に流れ着く。魑魅魍魎が跋扈するこの世界で、映画製作配給会社を立ち上げて10年間が経つ。
よく、日本人の方々に、日本人なのにすごいですね、と言われることがある。それは素直に嬉しいことであるのは間
違いないのだが…。
確かに日本人がアメリカでやっていくには、実力の前に、ビザ(労働許可証)、あるいはグリーンカードなどの合法手段が必要である。このエンターテインメント業界にも、日本人で才能のある方を山ほど見てきたが、このビザの問題をクリアーできずに、やむを得なく日本へ戻る方々も山ほど見ている、というよりほとんどの方々がそうである。俳優さんにしても、ビザが無ければコマーシャルにも出られない。
しかし、それは日本人だけでなく、アメリカ人以外のどの国の方々も一緒なのである。カナダ、イギリス、オーストラリアなどの英語圏でさえ、全く同様なのだ。
次に言語、が来る。私は、語学力こそもっとも大事な要素のひとつだと考える。これがなければ、ほとんどドアは開かない。しかし、私の指摘したいポイントは、日本人なのにすごい、という概念こそ、めまぐるしく移り変わる時代の流れのなかで、変えていかなければならないものなのではないだろうか。
私の住むロサンゼルスには、エンターテインメント業界だけでもあらゆるところから来ている。そもそもアメリカと言う国は、世界中から人が集まって作られた国なのである。なので、日本人だからすごい、という概念など、持っていても何の意味も無い。今、私が一緒に仕事をしている人間たちも、少なくとも三分の一はアメリカ以外の国から来ている人たちだ。この業界のスターたち、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ロバート・パティンソン、監督でもJames Wan(『ソウ』の監督)、Justin Lin(『ワイルドスピード』シリーズの監督)らも、アメリカ以外の国々から来て、この地で成功を収めている。あのシュワちゃんでさえそうだ。メジャーリーグで活躍する選手たちも同様である。
私は、日本で育ち、日本で教育を受けた。常に日本人であることへの誇りは持っているつもりである。しかし、このロサンゼルスでは、一人の人間として勝負している。プロデューサーという仕事は、多くの人間を統括し、コントロールしていかなければならない。当然、世界中から一癖もふた癖もある人間が集まれば、それはなかなか容易なことではない。
どこから来ても、結局は人と人のやり取りなのである。
これはアメリカに限らず、どの国でも同じことだ思う。
時代は常に移り変わる。海外で活躍する日本人の方々はたくさんいらっしゃるが、どんどん世界に出てチャレンジして、どんどん成功して、日本人だから当たり前だ、という概念を作り上げてみたいものである。