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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2012. 6.  RIETI  LETTER
贈る言葉顔画像と経歴



スポーツコメンテーター 小谷 実可子

 4年に一度のスポーツの祭典、オリンピックまで、いよいよ2ヵ月を切った。代表選手達もほぼ出揃い、スポーツ関係者の間でも「いくの?ロンドン」「ロンドン、いつから?」という挨拶が社交辞令代わりに交わされるようになってきた。私も選手として2回( ソウル、バルセロナ)、TBSの現地レポーターやIOCの公務、JOCのサポートなどでアトランタ、シドニー、アテネ、北京そしてロンドンと七回目の夏季オリンピックを肌で感じるのが俄然楽しみになってきた。

 しかし闘いは選手だけではなく、役員、トレーナー、マスコミ、それぞれの立場で争いが繰り広げられていて、私は行けなくなった人の事を考えてしまう。恐らくソウル五輪で二つのメダル獲得という栄光の後で、バルセロナでは補欠という経験が、私の目を破れた者に向けさせるのだろう。

 五月のゴールデンウイークに行われたシンクロジャパンオープンでも、私の出身クラブである東京シンクロSCの荒井美帆選手がソロで2位に入り、ひときわ大きな拍手を浴びていた。彼女はここ数年、シンクロ日本代表マーメードジャパンの一員として多くの実績を重ねたが、そのほとんどが補欠として、皆をサポートする役回りだった。四月に行われたロンドン五輪世界予選でもチームの一員として帯同し、ウクライナとの熾烈な代表争いを勝ち抜き、五輪出場権を勝ち取った日本チームに貢献した。しかしロンドン五輪本番はチーム編成が9名に減少されるため、荒井は本番でロンド ンに行くことはできない。きっと彼女のここまでの貢献に対するねぎらいが込められたソロ2位での拍手だったに違いない。

RIETI LETTER 表紙画像

 シンクロはデュエットの代表も乾、酒井、小林の3選手の中から、なかなか二人の正選手を決定しなかった。誰がデュエットを泳ぐにしても、三人は揃ってチームを泳ぎ、心を一つにしなければならない。エースの乾は先にデュエット出場が確定したため、残り一つの席を酒井、小林両選手で争うこととなった。そのため、この二人が組んだデュエットはジャパンオープンでも優勝を狙うデュエットというより、まな板に乗せられた鯉が二匹一緒に泳いでいる感じがした。私自身バルセロナ五輪の時、本番の2時間前まで選考がもつれ、誰が泳ぐかわからない中で練習をしていた時、二度とこういう選考にはならないようにと願っていた。息を合わせて心を一つにしたいときに、隣のパートナーを意識しながら、この人より上回らなければ、と思い続ける日々は本当にきつかった。

 オリンピックに出場してもそこで夢破れる者、そして出場がかなわなかった者、全ての人に男子マラソンで選考にもれた、あの市民ランナー川内優輝選手の言葉を贈りたい。「(東京マラソンで二時間七分台を出してロンドン五輪代表に選ばれ、練習環境がよく似ていて比較された)藤原新選手のような好記録を出す選手が出てきて、日本を代表して五輪で戦ってくれれば僕の存在した意味もあった」

 悔し涙の向こうにロンドン五輪を観戦する全ての選手達へ。貴方の存在があったから代表選手達は磨かれた。どうかその誇りを忘れないで欲しい。



次号は、ミズノ株式会社代表取締役副社長、上治丈太郎氏にお願いします。
リレーエッセイ 「贈る言葉」  (リーチレター 2012年6月号)  スポーツコメンテーター 小谷 実可子

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