「こぼれたミルクを嘆いてても仕方ない」幼いころ、よく母から教えられたブラジルのことわざです。
たとえ何か失敗しても、誰かを悪者にしたり、くよくよ後悔したって元には戻らない。
何がいけなかったのか反省して、二度と同じ失敗を繰り返さないようにすればいいんだ。
母は引っ込み思案だった僕に、その事を伝えたかったのだと思います。この母の教えのおかげで、何事にも失敗を恐れないでチャレンジできるようになり、僕の人生は素晴らしいものになりました。
34年前、地球の裏側のブラジルから見たことも聞いたことも無い日本に来たこと、日本人の妻と国際結婚したこと、母や兄弟達がいるブラジルから日本に帰化したこと等々。
もっと違う道があるんじゃないかと躊躇していたり、慎重になりすぎてタイミングを逃していたら今の僕はなかったでしょう。
もちろん成功ばかりではありません。数えきれない程失敗して、反省もたくさんしましたが、どうしてあの時やっておかなかったのだろうと思う後悔はありません。
考えているだけで行動せずに後悔するよりも、失敗してもいいから前向きにチャレンジしてみる。
そうすれば、もし失敗してもその経験は自分の財産になることでしょう。
監督としてチームを預かり真剣勝負をしていると、選手達の個性がよく見えてきます。
ゴール前でキーパーと一対一になっても失敗を恐れてパスしてしまう選手、自分が外したら負けてしまうかもしれないという責任を負ってでもチャレンジできる選手。
それぞれの成長も監督や他の選手からの信頼も大きく違ってくるでしょう。
サッカースクールや講演会などで全国を回って感じるのは、自分の考えや行動に自信を持てない若者が多いということです。
「このままサッカーを続けていてもプロになれるだろうか?」、「自分の選んだ進路は正しかったのだろうか?」といった質問をよく受けます。
そんな若者達に、僕の経験から言ってあげられるのは、「もっと自分を信じて、やれるところまで思いきりやってみたらいい。もしそこで間違いに気付いても、やり直すチャンスはきっとあるはずだから」ということです。
日本中がチャレンジする気持ちを持てたら、もう一度日本は元気になれると信じています。