グローバライゼーションという言葉を頻繁に耳にするようになってから、ずいぶん長い時間が経ったような気がします。しかし日本経済が、それにふさわしい状態になってきたかといえば、そう思えないのも現実です。
今年3月、スイスの都市「ダボス」で開かれた「世界経済フォーラム」、通称「ダボス会議」に出席してきました。そこで感じたのは「貿易の保護主義に対する強い警鐘」でした。保護主義が強化されれば、輸出による日本のモノづくりの強みが生かせなくなります。その意味で、ダボス会議での動きは、日本にとって歓迎すべきものであることはいうまでもありません。
しかし、アメリカが景気対策で「BuyAmerican」条項を検討したように、実態は保護主義の流れが強くなるかもしれませ
ん。放っておけば、日本のモノづくりの力は生かせなくなり、成長の希望も失われかねません。
これまで日本は、外需に頼りすぎていました。GDPに占める比率が20%弱の輸出産業が、かなりの雇用と価値を生んできたのです。そのため、リーマン・ショックによる世界的不況での輸出急減で、大不況になってしまった。
この状態を変えるには、内需拡大にもっと真剣に取り組むことです。買ってもらうためには、こちらも買えることです。アメリカそして中国を中心とした近隣のアジア諸国をはじめとした世界中と「買ってもらうだけの関係」ではなく、より国を開き買える態勢をつくることです。その為には、将に65歳以上の人達が7割近くを持っている1,500兆円の個人資産の活性化、つまり壮年層への資産移転を後押しする税制が必要です。
係る資産の移転で、家の購入やローンの返済による可処分所得増等、一番消費意欲が活発である人達が消費に向かうはずです。また、子供を持ちたい願望が多いと聞きますが、所得が移転されればそれを実現しようとする人達も増え、消費拡大とともに少子化のスピードを低減させることにもなるでしょう。
日本は島国の単一民族国家なので、外国の考え方を理解し尊重するのが苦手な一面を持っています。「ダイバーシティ(diversity=多様性)」への理解を深め、推進していくことが重要だと思います。ダイバーシティ推進には、もっと柔軟な移民政策も必要でしょう。そして彼らとよりお互いに文化を理解し合うことが肝要です。
多様化を受け入れてこそ日本発のイノベーションが生まれ、経済活動の活性化とともに内需が拡大していきます。自信を
持って自ら日本人としてのアイデンティティーを持ち、一方で他の文化つまり異なるモノに干渉することによりグローバライゼーションの世界で注目される存在になっていけるでしょう。