昨年の秋以降、金融危機が世界を襲い経済停滞を引き起こしていますが、このような状況下でも将来的に大きな成長が見込まれている分野がいくつかあります。航空産業がそのひとつです。
航空産業界は最先端の革新技術を結集しており、将来を見据えた製品作りを行っています。そして世界でも優秀な頭脳が集まる業界です。日本が現在の不況を脱出し、将来さらにグローバル化していく上で、航空産業は大きな役割を担うでしょう。世界の航空需要は堅調で、今後20年間で年率約5%の成長が見込まれています。2016年までに約24,300機の旅客機(100席以上)と貨物機の需要があり、金額ベースでは2.8兆ドルもの市場です。
航空産業界には機体を生産するメーカーだけでなく、エンジン・メーカーや部品メーカーなども多数存在し、これらの企業も最先端の技術を駆使し付加価値の高い競争力のある製品作りを行っています。
欧州の航空機メーカーであるエアバスは1970年に設立されました。近年は100座席以上を有する世界の航空機市場で毎年50%前後の受注シェアを獲得しています。2008年度は777機を受注し54%のシェアを、また483機を引き渡し56%のシェアを獲得しました。受注残数は3,700機以上で、現在の生産レートで7年以上かかります。長期的視点に立てば航空産業の将来は非常に明るいと言えるのです。
航空機製造においては世界的なサプライチェーンが確立され、部品調達のグローバル化が進んでいますが、航空会社も最近では急速にグローバル化しています。国境を越えた合従連衡の拡大や外国投資の規制撤廃などの動きが盛んになっている他、各地で低コスト航空会社が誕生しています。航空需要が増えれば、それに伴うインフラの整備や運航に伴う人材育成も必要になってくるのです。ここにも経済発展の潜在性が見て取れます。
こういった世界の動きは日本にとって何を意味しているのでしょうか。日本のように人口密度が高く、しかも周囲を海にかこまれている国にとって、航空輸送の重要性は強調するまでもありません。特に日本を含めたアジアの航空輸送の成長は世界平均を上回ることが予想されており、航空産業の重要性はますます高まっています。
日本は航空産業に戦略的に資源を集中することで、日本が得意とするモノ造り技術をさらに発展させることが出来るだけでなく、経済的・政治的にも利益を得ることが出来るでしょう。日本は先端技術力、製造ノウハウ、サービス精神、財務管理のどれをとっても優秀であり、世界の航空産業界でリーダーシップを取る能力を備えています。こうした意味においても、「アジア・ゲートウェイ構想」は、航空産業が21世紀における日本の繁栄とグローバル化をもたらす大きな可能性を秘めたアイデアだと言えるでしょう。私は日本の航空産業がさらに発展することを願っています。それにエアバスが少しでも貢献することが出来れば光栄です。