常勝アメリカが築き上げてきたグローバルビジネスモデルに亀裂が生じている。サブプライム問題に端を発した金融危機は、全世界に拡がる金融システムの複雑さと反応スピードの速さが問題に拍車をかけ、出口が見通せない所まで来た。そうした従来型のモデルの崩壊は、アメリカだけではない。2008年の1年間では、日本はアメリカよりも年間の株式時価総額の下落率が大きかった。即ち、日本も同様の問題に直面していると言える。
かつて、日本は戦後から大きな復興を成し遂げた。その牽引役になったのは、欧米にない新しいビジネスモデルだった。例えば、国際競争の中で新しい流通での役割を作り上げた商社や、高品質とコスト競争力を両立したメーカーがそうだ。戦後のリーダーたちが創造したこの新しいブレークスルー・モデルは、日本は小さな国でこのままでは国際的な競争に勝っていけない、という切迫感がドライバーとなって、その創造を成し得たのだと思う。日本のリーダー達はそうした無意識のうちに放り込まれた空間で、自分自身を問い続けることによって、創造を可能にした。
ところが現代社会において、企業は過去築いてきた経済大国という大きな屋台骨のおかげで、ともすれば内向きなフォロワーを輩出しがちとなり、安定性や同質性を求め、変化を好まなくなってきた。所謂、大企業病である。ところが現代の競争環境の下では、変化のスピードがますます加速化してきている。例えば、グーグルのようなビジネスモデルは、一夜にして事業の収益構造を変革する。従ってこの激変する環境下で、安定性を求めて改革や創造を怠ると、環境の変化についていけなくなる。つまりゆでガエルの状況となる。
振り返って現在の日本のトップ企業のリーダーを見てみると、必ずしも保守本流ではない人達が元気に見える。変化の激しい時期に企業が将来を任せるリーダーは、伝統の継承がその中心的な仕事ではない。この時代に求められるリーダーは、伝統や階層を尊ぶ管理職ではなく、組織を変革に導ける創造者でなければならない。企業を次の変革に導くのは、過去の伝統に育てられた同質の人達ではなく、今の価値観から見れば異分子に映る人達だ。この異分子達が、組織の中でどうやって自分を引き上げてくれるスポンサーを見つけるか、更に彼らがどうやって組織に創造をもたらせるかが組織存亡の鍵となる。安定を尊ぶ環境下で、如何に意識して人が育つ空間を創っていくかが、今、企業の経営者に求められている。