私は約10年前に、36歳の若さで社長
に就任いたしました。「多忙でストレスが
たまりやすい社長業をこなすには、心の安
らぎが得られる芸術に関する趣味を持ちた
い」と思って、経営者仲間の先輩に相談し
たところ、その先輩から勧められて裏千家
茶道の同好会に入会をさせて頂きました。
それまでは芸術的な趣味を持ったことが無
く、趣味といえばゴルフやスキーなどのス
ポーツでしたので、はたして茶道に興味が持
てるのかな、と半信半疑で御稽古に参加を始
めました。ところが、初めての御稽古で茶道
は私の心を見事につかんでしまい、あっとい
う間に茶道の虜になってしまいました。
茶道を習うということは、同時に華道・
書道・陶芸・礼儀作法・香道・懐石料理な
ども習うことになる、いわば和の総合芸術
でもあり、極めて奥の深い芸術なのです。
また茶道は御客様との触れ合いの場所で
あり、さまざまな分野の方々とお知り合い
になれるという社交の場所にもなります。
実際に、裏千家茶道の交流のお陰で、私の
人脈も極めて幅広くなりました。人と会う
こと話すことが大好きな私には最適な趣味
だったのです。
御稽古は、裏千家茶道名誉師範・桜井宗
梅先生のもとで、月3回・午後6時から午
後9時までとなります。御稽古では、茶道
の作法を真剣に習うのはもちろんですが、
一方で、形式にこだわらずに御客様に心の
安らぎを与える『おもてなしの心』も勉強
しています。
私が社長を務めているサンヨー食品は、
「サッポロ一番」ブランドの即席麺を製造
販売する食品メーカーであり、日本のみな
らず海外でも幅広く事業展開しておりま
す。食品メーカーとして最も重要な事は、
消費者に安全・安心を与える事ができるか
どうかであり、消費者第一の経営を実践す
る上で、裏千家茶道の『おもてなしの心』
が大変に役立っております。
稽古をしている約3時間は、静寂の中
で精神統一して、心の平静に努めて、自分
自身を見つめなおしております。そのお陰
で仕事に対しても精神集中ができているよ
うです。
御稽古に励んだ成果として、2004年
4月に歴代御家元の名前に使われる「宗」
の字を取りまして「井田宗純」の茶名を授
かり、同時に専任講師の資格も頂戴いたし
ました。
また2006年6月には日枝神社(東京都
千代田区)での献茶式にて坐忘斎御家元に薄茶
を点てさせて頂く名誉も頂戴いたしました。
さて今、国際化の波が日本にも押し寄せ
ております。しかしながら、日本人は日本
の文化や伝統をもっと理解して、その上で
国際化を進めるべきであると思います。そ
のための一つの方法として、日本の政界・
財界・官界のトップが和の芸術に親しみ『お
もてなしの心』を学ぶことも大切ではない
でしょうか?
今後も裏千家茶道を生涯の趣味として、
心の鍛錬に勤めてまいる所存です。