現在我が社は上海市浦東新区で１０１階
建ての超高層ビルを建設している。「上海
環球金融中心（Shanghai World Financial
Center）」である。
５月末の竣工に向けた最後の追い込みで、
水泳で言えば最終のターンの後、息継ぎ無
しでゴールまで泳ぎきるような状況である。
高さ４９２メートル、オフィス、ホテル、
商業施設、カンファレンス、展望台、テレ
ビ放送スタジオなどが入居する複合ビル
となり、経済の成長著しい上海市のランド
マークとして、世界中から注目を集めるこ
とになるだろうと期待している。
上海でビジネスをしていると多くの方
に、「中国ビジネスは大変でしょう。さぞ
苦労も多いことでしょう。」と、よく言わ
れる。だが、本当に中国でのビジネスは日
本よりも困難が多いのだろうか。
このプロジェクトは、建設は中国の大手
ゼネコン２社を筆頭に、３０社以上の施工
業者で構成され、資金の半分は中国側から
調達している。当然、日本のゼネコン相手
とは勝手が違うし、銀行や行政対応も中国
流でなかなか大変である。１９９５年にス
タートしたこのプロジェクトは、靖国問題
などで日中関係がギクシャクした時期も着
実に進み、途中のアジア通貨危機で工事を
中断した期間を除くと、正味８年で完成し
たことになる。一方で日本の六本木ヒルズ
プロジェクトは着手から竣工まで一七年も
かかった。
私有財産権など基本的な背景は異なり、
単純に比較はできないが、都市計画のマス
タープランに基づいた街区や道路整備・地
下鉄網整備など、いわゆる都市インフラの
整備に関して言えばはるかに上海の方が発
展のスピードが速い。計画中の滑走路が
遅々として進まない成田空港と、上海の浦
東国際空港とを見れば、その差は明らかで
ある。
共産党一党国家で行政権が強い故、そう
いったことが可能なのだと思われがちだ
が、実際は、行政サイドは極めて研究熱心
で、新しい制度や技術の導入に対し合理的
で柔軟に対応しているというのが、正直な
印象である。行政側が街のインフラ整備に
必死に取り組んでいる姿勢を見るにつけ、
我々民間の開発会社としては、街の将来像
を確信でき、とても心強く感じられる。
昨年当社で、東京のビジネスマンを対象
にアンケートを実施した。どの都市がアジ
ア経済の中心であるかという問いに対し、
現在は東京であると見ている人が一番多い
が、今後５～１０年後では、４１%の人が
上海と答え、東京と答えた人２５%を遥か
に上回っていた。東京で働くビジネスマン
でさえ、東京の将来に関して危機感を抱い
ているのである。
これからのグローバル競争の時代におい
て、東京はアジアの各都市と競争していか
ねばならない。ジャパンパッシング、東京
パッシングとならない為にも、新しいこと
に挑戦しやすい環境を作り、官民が一体と
なって東京の発展を進めることが求められ
るのではないだろうか。我々の上海での業
容が拡大すればするほど、そういった想い
を強くする。
