経済協力開発機構(OECD)が、2000
年から3年ごとに実施している、学習到達度
調査(PISA)の、2006年の調査結果
が発表された。日本は2000年と2003
年の調査で2位だった「科学的リテラシー」
が六位に転落した。加盟国平均を500点
に換算すると、日本は531点で、トップ
のフィンランドに比べると32点も下回っ
ている。次世代の科学技術を支える子ども
たちの科学力低下が心配だ。
私どもは、天体望遠鏡やプラネタリウム
などの天文機器を製造販売している会社だ
が、早くからコンテンツの重要性を認識し、
1981年に社内にプラネタリウムで投映
するコンテンツを制作するソフト開発課を
設置し、毎年200作品以上のコンテンツ
を全国のプラネタリウム館に提供してきた。
1998年12月、10年ぶりに小・中
学校の学習指導要領が改訂され、児童に生
きる力を育むことを目指し、自ら学び自ら
考える力の育成を旗印に、小・中学校での
理科教育などの時間が大幅に削減され、代
わって総合的な学習の時間が新たに設けら
れた。これは、地域や学校、生徒の実態に
応じて、横断的・総合的な学習や生徒の興
味・関心等に基づく学習など創意工夫を生
かした教育活動を行うものであり、これに
よって、地域の自然、人材、行事や公共施
設の積極的な活用が求められるようになっ
た。従って、地域の博物館や科学館、プラ
ネタリウム館などの果たす役割がこれまで
以上に重要視されるようになった。
私は、2003年5月に代表取締役社長
に就任したが、プラネタリウム館に子ども
たちが学習するコンテンツを供給するより
も、これからは、子どもたちにどのように
学んでもらえばより学習効果が上るか、と
いうノウハウを供給する方が重要だと思う
ようになった。そこで、その年の9月に改
正地方自治法の施行により、地方自治体の
「公の施設」の管理運営に指定管理者制度
が導入された時、積極的にプラネタリウム
館の管理運営に乗り出すことにした。現在、
北九州市立児童文化科学館と新潟県立自然
科学館、新・仙台市天文台のプラネタリウ
ムの管理運営を受託している。
また、学校で手軽に利用できるインター
ネット望遠鏡を、母校である慶應義塾大学
と共同で開発する際に、ハードだけではな
く、それを使った教育カリキュラムも同時
に開発することにした。現在、このインター
ネット望遠鏡はまだ開発の途上だが、私ど
もの会社の屋上と慶應義塾大学ニューヨー
ク学院に設置し、同大学の総合教育セミ
ナーで、学生たちが木星の衛星の位置観測
を行い、その結果を解析して木星本体の質
量を算出するという試みを行っている。今
後、もっと多くの場所にインターネット望
遠鏡を設置し、小学生や中学生にも使って
もらい、科学する楽しさを体験してもらい
たいと思っている。