社会保険庁、厚生労働省、防衛省など国
家公務員の不祥事が続いている。次々と判
明する個別事案に対し、「担当者名を明ら
かにせよ」、「退職金を返納させろ」といっ
た情緒的な責任追及論が喧しい。しかし、
責任追及だけで思考停止せず、何故こう
した問題が数十年にわたり繰り返されるの
か、問題の本質は一体なにか、国家公務員
個々人のインセンティブを紐解いていかな
ければ本当の解決にはならない。人間はイ
ンセンティブの奴隷である。従って、いず
れのケースにも、彼らのこうした行動を方
向付けるインセンティブが働いたに違いな
い。
例えば、社会保険庁(年金)、厚生労働省
(薬害肝炎)のケースは、「年功序列・終身
雇用人事」も大きな要因の一つではないか。
省庁は次官を頂点に末端の事務官まで幾重
にも連なる年次・階層から構成される組織。
そして、終身雇用型の組織は当然、非常に
閉鎖的な共同体化する。そこでは、長年先
輩から引き継がれた法令解釈や事務処理の
方針変更は、莫大な調整コストに加えて、当人には、閉鎖的共同体の中で今後の人生
を厄介者として過ごす勇気が必要になろう。
役人にだって家族もいれば生活もある。辞
職覚悟でもなしに行動は起こせない。
また、防衛省(業者との癒着)のケー
スは、「民高官低の待遇」も一つの要因か
もしれない。要は、一流大学を優秀な成
績で卒業し、高い使命感を抱いた人材が
終身奉職するには、国家公務員キャリア
の給与水準は今や低すぎるのではないか
という点だ。おまけに天下り規制等から
退官後に元をとる仕組みももはや怪しい。
学生時代の同級生の多くの年収が自分よ
りも高いという現実を前に複雑な気持ち
を持つ者がいても不思議ではない。そし
て、こんなに安月給で働いているのだか
ら・・・、ましてや、愛する家族に少しで
も経済的にいい思いをさせたい・・・、と
いう切なる気持ちが働いたら、いかに国家
公務員であっても聖人君子ではない。忠
実義務や倫理観だけを頼りに個人の行動
は縛れない。
そこで提案だが@次官・局長級の幹部はすべて官民間の出入り自由(リボルビ
ングドア)を導入したうえで、A国家公
務員のキャリア職を全て四.五年程度の
有期雇用、もちろん年功、年次関係なし
の能力雇用としてはどうだろうか。
トップレベルの民間人にも、人生一度
は国家に奉仕したいという気概を持つ人
がいる。また、経済、社会の国際化・複
雑化が進展するなかで、民間の第一線の
知見を積極的に採り入れることの大切さ
は産業再生機構の例でも自明だ。任期を
四.五年程度とすれば、純粋に職責のみ
を全うすべく過去に囚われない中立・公
正な判断も可能になるだろう。聖人君子
でなくても時限であれば何とかストイッ
クに頑張りきれる。まさに「国家公務員
の本懐」である。さらに、一流の民間プ
レーヤーは、今さらゴルフ接待に魅力な
ど感じないだろうし、任期中の評価は民
間復帰後のビジネスを大きく左右するか
ら、自ずと自己抑制も働くのではないか。