ＴＢＳで放送の「世界ふしぎ発見!」が今
年の三月三日で一○○○回の放送を迎えた。
一九八六年四月に放送開始して以来、二一
年間ほぼ毎週放送して、一○○○回を迎え
る。私はこの番組の企画者で、今もプロ
デューサーを務めている。
「世界ふしぎ発見!」は日立製作所の一社
提供番組である。今は一社で提供する番組
も数少なくなった。
毎年二月私は提供主に「世界ふしぎ発見!」
の年間プレゼンテーションをする。それはい
つも三○ページを越える分厚い企画書になる。
これを二一年間一度も欠かしたことがない。「世
界ふしぎ発見!」の歴史の見つめ方、捉え方、
古代文明であっても人間がいかにすばらしい
知恵を持っているかを毎年、熱く語る。どんな
歴史を取材するかを提案する。古代文明、秘境、
動植物、旅、科学技術、芸術と色とりどりである。
世界の変化は激しく、戦争状態の地域の確認、
中近東の捉え方、自然災害に対するケア、各
国の政治状況を分析して、取材地を選択する。
リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂いております。
今年は環境問題にも主題を広げる。出演者は草
野仁、黒柳徹子、板東英二、野々村真、ミステリー
ハンター、ゲスト解答者らほんとうにこの番
組を愛して出演してくれる方を選択する。
視聴率は、高いのが良いのはもちろんだが、
適切な率であることを志向する。番組の質を
優先すると励ましてくれる日立グループであ
る。だが、「世界ふしぎ発見!」の視聴率は時々
高視聴率番組にランクされる。そんなときは
素直に嬉しい。
あるとき広告代理店から、番組内で放送す
る今までにないコマーシャルを企画してくれ
ないかと頼まれた。私は即座に「社長が自分
で語る日立のコマーシャル」と言った。なん
とその企画を当時の庄山悦彦社長が快諾した。
その撮影には一つだけ庄山社長の条件があっ
た。「撮影は夏休みの家内との私的な旅行中で
あってほしい。みんなが忙しいときに、社業
を離れるわけにはいかない」。旅行先は一度行っ
てみたかったというエジプトのアレクサンド
リアになった。そこの古代図書館で、ユビキ
タスについて語る。ユビキタスは過去の水道や
電気のように人間の生活にとってかけがえの
ないものになるという社長のお話が用意され
た。同行した奥さんの私への注文はたった一つ、
「主人に少しおなかをひっこめるように言って
くださいね」。社長談話の撮影は一回でOKが
出た。そのコマーシャルが、とても評判が良かっ
たと聞いて、私もほっと胸をなでおろした。
日立は今、「世界ふしぎ発見!」で、地雷除
去活動のインフォマーシャルCMを放送して
いる。商品の販売促進に直接結びつくような
コマーシャルが求められる時代に、そんな広
告観を持つ企業があることに驚く。だから私は、
テレビマンユニオンの会長になってもこの番
組の現場プロデューサーを辞めることはない。
「世界ふしぎ発見!」第一回古代エジプト
編の監修をしていただき、番組の解答者で
もある吉村作治先生に次号でさらにおもし
ろいお話をうかがえる。吉村先生はサイバー
大学の学長になられた。
