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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2006. 11.  RIETI  LETTER
原子力ルネッサンス顔画像と経歴




  新日本製鐵株式会社
  相談役名誉会長  今井  敬

 最近、囲碁人口が激減している。会社の囲 碁部はとうとう無くなり、OB囲碁会のみが 盛んだ。団塊の世代の人たちは、一体何を趣 味として生活してきたのであろう。私は日本 棋院総裁として、今は青少年の囲碁熱に望み を託している。何故こんな書き出しかという と、私にバトンを渡して下さった中原恒雄氏 は、六十年近く前の東大囲碁部のキャプテン であり、私はその末席を汚していたからだ。

 閑話休題、今回は原子力の話をしたい。

 原子爆弾が広島に落ちた時、私は帝国海軍 最後の兵学校生徒で、山口県防府にいた。敗 戦間もなく帰京する際、広島を通り、その悲 惨な状況に息をのんだ。

RIETI LETTER 表紙画像  その罪滅ぼしか、六十年前にアメリカ大統 領のアイクが、 「アトムズ・フォー・ピース」を 唱えた。当時、新進気鋭の中曽根康弘代議士 はアメリカでこれを聞き、日本にも原子力の 平和利用を、と運動して、日本の原子力平和 利用三法が出来た。一九五五年のことである。 これには、軽水炉は勿論、核燃料サイクル、 フュージョンまで展望されており、その他の 放射能の平和利用までもが唱えられていた。

 それから、五十年経った。現在、我が国の 軽水炉は五十五基、一次エネルギーの十数% を担う。また、究極のエネルギーである高速 増殖炉も、もんじゅの事故で十年間中断した が、近いうちに再稼動することになっている。 気の長い話だが、四十年後には商業炉が動い ている筈だ。

 それまでは、使用済み燃料を再処理して 出来たプルトニウムをウランと混ぜ、MOX 燃料として使用する話が進んでいる。今、十 七、八基がMOX燃料を使えるところまで来 つつある。

 こうした中で、経産省は今般、原子力立国 計画を発表した。誠に時宜を得ている。 原子力は、再生産可能な究極のエネルギー である。また、CO 2 の発生は殆ど無い。隣 国である中国は、経済発展のためにエネルギ ーを濫消費し、石油やガスを世界中から買い 漁っている。また、石炭を二十億トン燃やし、 大量のCO 2 を発生させている。こうしたこ とから、エネルギーの安全保障と、地球環境の ためにも、原子力の利用拡大は不可欠である。

 また、アメリカ・イギリス・スウェーデン など、世界的にも原子力発電見直しの気運が 盛り上がっている。「原子力ルネッサンス」 と言われる所以だ。

 しかし、原子力発電と、核兵器開発は隣り 合わせだ。北朝鮮やイラン問題など、人類の 将来に心配な要素もある。

 日本は、核兵器を持たない国の中で、唯一、 核廃棄物の処理が認められている。疑いを除 くためにも、出てきたプルトニウムは直ちに MOX燃料にしなければならない。こうした 平和利用には、国際的な大人の合意と、国内 にあっては原発立地地域の協力が不可欠だ。

 その協力を得るためには、原子力産業に携わ る者は、絶対事故を起こさない覚悟を持つ必 要がある。そして国内的に、国民の信頼感を取 り戻さねばならない。また、平和利用の先進国 としての模範を世界に示さなければならない。

 五十年振りに、装いを新たにした原産協は、 こうしたことのために重要な役割を担ってい る。私はその会長として、今後、積極的に行 動していくつもりである。



次号は伊藤忠商事(株)相談役、 室伏稔氏にお願いします。
リレーエッセイ 「原子力ルネッサンス」  (リーチレター 2006年11月号)  新日本製鐵株式会社  相談役名誉会長  今井  敬

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