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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2006. 10.  RIETI  LETTER
二一世紀の人類の指名顔画像と経歴




  社団法人  日本工学アカデミー
  会長  中原  恒雄

 現在二一世紀初頭であるが、今世紀中に環 境の悪化と資源の不足から人類が破滅する恐 れがあるとの警告が度々聞かれるようになった。 直接の動機は炭酸ガスの過剰放射による地球 温暖化と化石燃料・鉱物資源の枯渇の懸念で ある。この問題については、百年単位の考察 が必要となる。数百年前の歴史をたどること はさほど困難ではない。しかし百年先の未来 を予想することは簡単ではない。比較的容易 なのは、人口予測、その次は科学技術、そし てこれを利用した産業予想であろう。最も困 難なのは、人間及びその集団である人間社会 の行動の予測である。しかしこの百年間に起 こりうる人類の絶滅を回避するためには、是 非ともこれらの未来予測に挑戦をせねばなら ない。これこそ二一世紀の人類の使命である。

 人類にとりエネルギーや資源の不足に脅威 を抱くようになった起こりは、一八世紀天才 ニュートンの出現から、一九世紀にイギリス で産業革命がおこり工業化時代が始まったこ とにある。そして二○世紀にアメリカを中心 として情報通信革命がおこり、人類の活動範 囲は飛躍的に拡大し情報産業時代を迎えた。 更に二一世紀には、知能生命工学革命が起こ り人類の健康寿命が延び、知的活動範囲は直 接体験を超越して宇宙からミクロの世界まで 拡大され、頭脳産業時代を迎えることになる。

 以上は科学技術と産業の立場から眺めた話 だが、夫々の時代の人々の事実認識と生き方 の変遷はどうであったか。無知な人類は種の 保存本能に任せて人口の加速度的増加を傍観 してきた。その間に人類の生存に必要なエネ ルギーと資源の枯渇の危機が秘かに忍び寄っ てきていたのである。特に大規模な人類社会 では、俄に考え方を変えることが難しい。一 旦人類絶滅の方向に向かうと、一握りの賢 人・エリートの献身的努力ではどうにもなら なくなってくる。遠い未来に対するリーダー の洞察力と実質的に世の中を動かす大衆の理 解のみが人類絶滅の回避を可能にする。

RIETI LETTER 表紙画像  人類の生存を確実にするには、エネルギー 特に原子力・核融合がキーテクノロジーであ る。そして、衣食住に関わる様々の高度技術 の開発と実用化に注力することが必要であ る。これらの技術が開発されたとしても、そ の使い方が人類の運命を決める。政治形態と して民主主義が生き残るためには、過半数の 有権者の正しい技術の理解が必須となる。国、 企業、宗教などの組織と、人類の生存を可能 にするグローバルな基準の間の利害調整も必 要である。それぞれの専門家が愛国心・愛社 心から、職業に対する忠誠心へと移行すべき 時代となる。

 二一世紀の人類の滅亡を未然に防ぐには、 数々の画期的な技術開発を必要とする。そし てこれを使う人間社会が、正しく技術を理解 して、その時代に適応するように社会を改革 していかねばならない。このような観点から、 (社)日本工学アカデミーでは、二一世紀に おける技術者の使命を痛感し、「環境と持続 的成長」について、世界の工学アカデミーの 会合を提案してきた。そして、二○○七年一 ○月に東京新宿の京王プラザホテルで、国際 工学アカデミー連合と日本工学アカデミーの 共催で、シンポジウムを開催する手筈が整っ た。また国連等にも働きかけを始めている。 関係各位の絶大なるご支援をお願いして筆を 置きたいと思う。



次号は(社)日本原子力産業協会会長、 今井敬氏にお願いします。
リレーエッセイ 「二一世紀の人類の指名」  (リーチレター 2006年10月号)  社団法人  日本工学アカデミー  会長  中原  恒雄

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