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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2006. 9.  RIETI  LETTER
峠を越えた石油文明顔画像と経歴




  社団法人  日本工学会
  顧問  内田  盛也

 石油は世界一次エネルギーの約四割、輸 送用エネルギーの約九割を供給、合成樹脂 は容量ベースで鉄鋼と並び、化学繊維と天 然繊維はほぼ同量、肥料・農薬、医薬・生 活品など石油依存で、現代は石油文明時代 と言える。

 日本の使用総エネルギー量を成人労働力 に換算すると約六七億人で世界人口を超え る。国際エネルギー機関によれば、G DP (千米ドル)単位当たりの一次エネルギー消費 量は、日本を一としてE U一・八、米国 二・一、カナダ三・二、韓国三・三、中東 六・二、ASEAN六・三、中国八・七、 ロシア一九・七、我が国は世界最高のエネ ルギー効率による経済成長をしている先進 国家である。

 原油高価格定着で世界経済は動揺、国際 政治と通商秩序にまで影響を与えている。 それは中国など巨大人口途上国の資源浪費 型経済成長によるもので、その結果石油利 権の争奪、資源保有国の国営化・過大な利 益配分要求など石油戦争の様相が見られる。

RIETI LETTER 表紙画像  石油は豊富で安価な大油田から開発利用 された。その可採埋蔵量は年率四.六パー セント減少、現油田回収率約三○パーセン トを五○パーセント以上とする開発投資が 行われているが、二○一五年需要の半分を 満たす程度、従って新しい油田・ガス田の 開発が必要となる。先端技術の進歩で、地 球上利用可能な資源の存在は、殆ど把握さ れ残された開発対象は、海洋二○○○メー トル以上の深海、大陸の未開発僻地で、高 度技術力発揮と災害・環境保全対策を政情 不安の中で行う事になる。その投資リスク は巨大である。

 一方、化石燃料使用で地球温暖化、異常気象 が発生、工業化・都市化の拡大と合わせて 農業適地が減少、食糧供給不安も始まった。 地球自然保護基金は、人類が必要とする 地球上の食糧、木材等の生産適地、漁場、 森林面積は、約一三五億ヘクタールと見積 もっている。現状は地表の約二五パーセン ト、約一一三億ヘクタールで約二○パーセ ント少なく、地球は人類扶養能力を既に失 っている。その中で飢餓人口約八億、一日 一ドル以下の生活人口約一二億、電気を持 たない人類約四分の一の存在がある。さら に二○五○年世界人口は約九○億へ増加す る。有限の地球と人類の現実を直視して、 資源浪費型経済依存からの脱却・転換をは からなくてはならない。全世界石油消費量 八四○○万バーレル/日の五パーセントを 消エネ・再生可能エネルギーへ転換すると、それは世界最大の超巨大油田ガワールの発 見開発に相当する。一割でサウジアラビア の供給量に迫る。その先端技術力の駆使活 用は成果の確実な投資であり、未来開拓型 経済刺激効果も大である。

 石油に起因する地球規模の課題解決には、 世界各地域の自然風土と文化(生活様式) に適合した小規模で複合的な技術の活用が 必要となる。それは国際的な目的共有によ る分散型巨大プロジェクトの推進と言える。

 技術が政治・経済と並立して国際外交の 表舞台に出る時代、先端技術強国日本のイ ニシアティブ発揮を望むものである。



次号は社団法人日本工学アカデミー会長、中原恒雄氏 にお願いします。
リレーエッセイ 「峠を越えた石油文明」  (リーチレター 2006年9月号)  社団法人日本工学会顧問  内田  盛也

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