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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2011. 9.  RIETI  LETTER
パラダイム・チェンジ顔画像と経歴



歌手  郷 ひろみ

 描いている夢や目標を達成するためにチャレンジしている方々は、希望に満ちた時を過ごしていると思う。好きだからこそ、楽しんでそれに向かっていける。僕もその一人だが、それは簡単に手に入れられるものではなく、簡単に手に入ったものは簡単になくなってしまう。自分の経験から知ったのは、三日で出来たことは放っておけば三日で忘れ、一か月で出来たことでも容易に放り出すことができるが、三年続けられると違うレベルに達しているので、こんなことをいつまで続けるのだろうなどとは考えず、そこまで続けてきた自信が、次のステージに行きたいという意識をもたらすということだ。運動を例にすれば、三か月でほぼ筋肉の質が変わって成果が見えるが、そこで終わらせると身体も意識も成果以前に戻ってしまう。しかし三年続けると、やめたいとは思わなくなっているのである。

 僕にとってチャレンジとは、長い目で自分の人生設計をし、そこで自分がどこまで追究できるか、どこまでのかたちを手に入れられるか、手に入れられたならそれをどう進化させることができるかということだ。

RIETI LETTER 表紙画像

 もちろん若い時からこういう考えを抱いていたわけではない。デビューした15、6歳の当初は歌も踊りもしゃべりもそんなにうまくできないことを僕は自覚していた。ただ、スタートした以上はそれを極めないでやめるという考えは持っていなかった。それから多くの人々や本に出会い、さまざまな経験を積み、いつの頃からか自分を変えたいと思うようになった。これまでいくつも転換点はあったが、最も大きなターニングポイントは、40代半ばで行ったニューヨークで素晴らしいボーカル・トレーナーの師に出会えたことだ。その師から3年間みっちりトレーニングを受けたことで、抱えていたいろいろな迷いが吹っ切れたのだ。

 そして思う。実は、楽しいことよりも辛いこと悲しいことのほうが何倍も多いのが人生なのではないだろうか。だが傷を負った時に、なんでこんな目に合うのかと思うのと、この程度で良かったとポジティブに思うのでは傷の治り方は違ってくるだろう。そしてそれを乗り越えていくことによって人間は大きくなっていき、他者に対して優しい気持ちを持てるようになることも確かなのだ。

 僕には、自分の人生で大切にしていることが3つある。それは思考、行動、継続だ。なにかを始めたいとか、どうすればよいかなどさまざまにめぐらすその思考のなかには信念があり、信念があってこそ思考が明確になる。行動は情熱を伴っていて、この情熱というものがあるから行動に移すことができる。最後の継続には忍耐が必要だ。忍耐、すなわち我慢すること。我慢して続けていくうちに花開いていく。だから努力ということについて考え方を変えてみると、これだけやっても出来ないという発想ではなく、できるまでやるのが努力なのではないか。そんなことを考えながら、僕は今でも自分が少しずつ変わっていくことを望んで日々を過ごしている。



次号は、、料理人の幸村純氏にお願いします。
リレーエッセイ 「思考、行動、継続―人生で大切な三つのこと」  (リーチレター 2011年9月号)  歌手  郷 ひろみ

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