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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2009. 9.  RIETI  LETTER
日本のインテグレーション力顔画像と経歴




フューチャーアーキテクト株式会社 代表取締役CEO
金丸 恭文

 さまざまな意見を足し合わせて、それぞれの意見から程よい距離感を保った結論はおそらくインテグレーションとは言えない。日本語に置き換えると「統合力」と「調整力」とは違う。

 導き出された結論ではなく、ゴールイメージを明確に持ち、粘り強く、異なる考えや人を牽引し、現在より未来を良くすることが真のインテグレーション力ではないか。

 果たして日本のインテグレーション力はどうだろうか?

 車両、レール、トンネル採掘技術、鉄橋構築技術どれを取っても世界一の技術を日本は有しているにも関わらず、鉄道構築全体の大型国際入札で日本はほとんど勝ったことがないらしい。その理由はこれらの優れた技術を統合し、相手の国の自然や社会に合わせて最適な解を導き出すインテグレーション力を持った企業が日本にはないからだそうだ。

 我々のIT業界では要素技術のほとんどすべては米国製で、「インテグレーションをすること」こそ日本の残された領域だが、パッケージソフトと現状とのギャップを分析することが「デザイン」に替わり、隙間(時にはコントロール不能なぐらい大きくなってしまうが)を埋めることこそがインテグレーションになってしまった。

RIETI LETTER 表紙画像

 インテグレートするには全体を統合可能で大義を有した構想力に加えて、強いリーダーシップと粘り強い信念が不可欠だ。最近では「戦略的標準化」の主導権を保持することがその後の長い時間の優位性を決めてしまう。良いモノを安く作るだけの競争から「モノ」や「サービス」が活用されるシーンにイノベーションをも起こす、大きく言えば個人のライフスタイルや社会全体の設計を描いた後に「モノ」や「サービス」が実装される。しかも「モノ」と「サービス」はすべてネットワークで繋がる可能性が高い時代である。

 何度も挫折して復活しただけでなく、新しい時代に相応しい新しいサービスを構想し、我々のライフスタイルに変革をもたらした、アップル社を創業したスティーブ・ジョブズ氏にはイキザマごと惹きつけられる。日本にもコンビニエンスストアが、モノからエンターテイメントサービスや金融サービスまで提供する社会のイノベータとして、我々のライフスタイルを変革し続けた。日本にもインテグレーション力は確かに存在している。

 そのインテグレーション力を身につけるにはリーダーシップがあることはもちろん重要だが、若いうちから適切な範囲で権限と責任を与え、多少の失敗をポジティブに受け止める先輩や社会の存在もなければならない。

 最後に私の好きな先人の言葉を紹介して次の方へバトンタッチ致します。

 「成功はよい判断から生まれ、よい判断は経験から生まれ、経験は誤った判断から生まれる。」



次号は、医療法人社団 健育会理事長、竹川節男氏にお願いします。
リレーエッセイ 「日本のインテグレーション力」  (リーチレター 2009年9月号)  フューチャーアーキテクト株式会社 代表取締役CEO  金丸 恭文

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