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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2008. 8.  RIETI  LETTER
銀行との安定的な取引関係の築き方顔画像と経歴




リッキービジネスソリューション株式会社
代表取締役  澁谷  耕一

 弊社は、企業と銀行との間に位置する会 社です。

 中堅・中小企業の経営企画や管理のサポー ト業務(資金調達の際の事業概要書や事業 計画書の作成、管理資料作成等)や、銀行 員の教育・研修業務(企業経営者とのコミュ ニケーション術や企業審査等)を主な事業 内容としており、企業経営者や銀行員の両 者とお会いする機会が多くあります。間に 立つと、両者が理解し合えている部分と、 そうでない部分がはっきりと分かります。 企業経営者と銀行員との「ミスコミュニケー ション」を埋める役割を務めているのです。 その意味では、企業経営者と銀行員のコミュ ニケーションのお手伝いをしている「通訳」 ともいえます。私は弊社を6年前に設立し ましたが、それまでは24年間、日本興業 銀行で融資業務を担当しました。弊社の社 員の多くは元銀行員で、銀行の経営状況や、 銀行員の考え方をよく理解しています。

 1997年、日本経済はバブル経済の崩 壊によって、不良債権問題が深刻化し、山 一証券や北海道拓殖銀行の破綻によって金 融不安に陥りました。都市銀行を中心に、貸 出資産の圧縮、いわゆる貸し渋り・貸し剥が しを行い、企業経営者は資金繰りに追われる ことになりました。その後、景気は徐々に回 復し、2005年には銀行は不良債権処理に 目途が付いたこともあって、貸出資産の積み 上げを図ることに注力し始め、その融資姿勢 を従来の消極的なものから一転して積極的に 貸出しをするようになっていきました。

 しかし、昨年のサブプライムローン問題、 建築基準法の改正等を原因とする不動産、マ ンション開発、建設業界等の業績悪化を受け て、これらの業種の企業に対する融資姿勢は より厳しくなりました。昨年末からは銀行の 小売業に対する貸出も消極的になっています。

RIETI LETTER 表紙画像  つまり、企業を取り巻く環境と銀行の融資 姿勢は密接に関係しています。そのため、資 金繰りを間接金融(銀行借入)に依存する比 率の高い日本企業は、銀行の都合によってそ の経営を大きく左右されてしまうというリス クがあるのです。

 では企業はどうすれば銀行との安定した 取引関係を築くことができるのでしょうか。

 @会社の業績を安定させる、A借入れに過 度に依存しない、B自己資本を厚くしてリス ク対応力を付ける、Cしっかりとした内部管 理体制を構築する、というようなことはも ちろん、なにより大切なことは、「銀行との コミュニケーションを十分に取る」という ことです。

 現在では、銀行員も人員のスリム化、業務 の多様化が進み、かつてのような時間的余裕 がなくなりました。企業の資金需要は減退し、 頼みのリテール(個人)部門でも、ゆうちょ 銀行などとの競争が激化しています。このよ うな環境の下では、企業は銀行員が会社に来 てくれるのを待っているのではなく、経営者 の方から銀行に自社をアピールしなければな りません。銀行員は担当しているすべての企 業を熟知しているわけではありません。企業 発でコミュニケーションを図り、銀行にこの 会社はしっかりとした成長企業だと認識して もらうことが重要なのです。

 銀行はわかってくれているはずだと勝手 に思い込んでいては、銀行との安定的な取 引関係の構築などありえません。銀行に事 業計画を提出する、大きな投資は説明する、 決算の説明に行くなど、日頃から銀行との コンタクトを密にすることによって、安定 した取引関係が構築できるのです。



次号は、(株)KKRジャパン代表取締役社長、蓑田秀策氏にお願いします。
リレーエッセイ 「銀行との安定的な取引関係の築き方」  (リーチレター 2008年8月号)  リッキービジネスソリューション株式会社  代表取締役  澁谷   耕一

 info@chosakai.or.jp
 http://www.chosakai.or.jp/

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