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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2006. 12.  RIETI  LETTER
ABACネットワーク顔画像と経歴




  伊藤忠商事株式会社
  相談役  室伏  稔

 去る八月、フィリピン・セブ島でAPE C/ABACマニラ会議一○周年記念式典が 開かれた。私もお招きを受け、出席した。

 ABAC(APECビジネス諮問委員会) というのはAPEC(アジア太平洋経済協力 会議)を推進するために各国首脳から委嘱さ れたビジネストップの集いである。 一九九四年、私は当時の村山首相から、A BACの前身のPBFの初代日本代表の一人 に任命された。一九九六年、フィリピンのス ービックAPEC首脳会議の際のABACに も私は出席した。

 早いもので、あれから一○年が経つ。

RIETI LETTER 表紙画像  セブのホテルの部屋に入ると、晩餐会用に 着用する正装のバロンタガログが備えてあ る。着てみると体にピッタリである。案内状 が届いた際、寸法を聞いてきた。こういうと ころは芸が細かい。早速着用して会場に向か ったら、マニラから着いたばかりのラモス元 大統領に会った。 親しく話しているうちに、 次から次へ、懐かしい顔が集まってくる。

 私は、ジェフリー・クー(台湾)、イメルダ・ ロッシュ(豪州)、ナバロ夫妻(フィリピン)他と ともにラモスさんと同じテーブルを囲んだ。

 一○年前のAPECの想い出話に花が咲い た。ある時、ラモス大統領はわれわれABAC メンバーを夫妻でマラカニアン宮殿の晩餐会 に招き、労って下さった。ラモスさんは翌朝、 帰任直前の松田慶文駐フィリピン大使の送別 ゴルフを約束されていた。ところが、夜中の一 二時を過ぎてもラモスさんは席を立たない。 松田大使は早朝ゴルフはとても無理かなと 半ば諦めて帰宅された。ところが後で聞いた ところでは、ラモスさんは翌朝五時前にマラ カニアン宮殿内のゴルフコースの一番ティー で大使をお待ちしていたそうである。ラモス さんは気配りと気遣いの人なのである。

 もっとも、ラモスさんの人使いの荒さも相 当なもので、ロムロ(元外相)、ナバロ(元 貿易工業相)、シアソン(元外相)といった 中核閣僚は、朝五時に、「今朝の新聞を見た か」と電話で起こされたり、真夜中の午前三 時に緊急会議とか、まさに二四時間勤務体制 だとこぼしていたのを覚えている。

 セブでの晩餐会の夜はにぎやかな舞踏曲と ともに更けていった。ABAC同窓会の集い を私は存分に楽しんだ。ただ、この一○年、A PECの存在感が薄れていくのが気になる。

 APECは日本にとって大切な国際的枠組 みであることを再認識する時であると思う。 それは、民主主義と市場経済という価値を 基盤にしたアジア太平洋地域の構築が、日本 の長期的、安定的な発展にとって望ましいか らにほかならない。

 二国間FTAを進めることも重要である。 ただ、二国間だけでは十分に対応できない課 題もある。例えば、安定した日中二国間関係 を築くには、それを支える多角的な面を広げ ることが望ましい。より平和的、より民主的、 より市場経済的な中国に向かわせるため、日 本は、米国、ロシア、ASEANと協力して いく必要がある。APECはそれをつくる土 台になりうる。

 もう一度、APECに活を入れ、アジア太 平洋協力の礎にするべきだ、日本こそそのた めのイニシアティブを発揮するべきだ−一○ 年後の同窓会に出席し、改めて痛感した次第 である。



次号は三井物産褐レ問、上島重二氏にお願いします。
リレーエッセイ 「ABACネットワーク」  (リーチレター 2006年12月号)  伊藤忠商事株式会社  相談役  室伏  稔

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